コロナウイルス対策、ソーシャル・ディスタンシングに徒歩のススメ【いまだ...

コロナウイルス対策、ソーシャル・ディスタンシングに徒歩のススメ【いまだからできること #5】

コロナウイルス対策、ソーシャル・ディスタンシングに徒歩のススメ【いまだからできること #5】

よく歩いて帰る遊歩道。ありふれた道だが、車道から離れているため静か。こういった場所を見つけられることこそ、徒歩の醍醐味だ。

先日、Pen編集部もテレワーク体制に移行した。しかし自宅にいたとしても、さすがに長い時間じっとはしていられないという方も多いだろう。今回はそんな時、一旦歩いてみようという話をしたい。

編集部は東京の目黒に位置していて、通勤の際は電車で行き来をしていたのだが、特に帰りに余裕があれば最寄りのふた駅手前で降り、歩いて帰ることがあった。ある時、いつものルートを変えてふと入った狭い遊歩道がある。人ひとりが通れるくらいの道の両脇には植木が並び、先には充実した遊具やバスケットボールコートが備わっている公園があり、そこを通り過ぎるとまた道が続いていく。1kmにも満たない短い遊歩道なのだが、道を外したことで発見できたわけで、そういったふとしたことが徒歩の醍醐味だと思っている。

都市に住む人びとの移動は、徹底された交通インフラによって実によく整えられている。それによる功罪について、アメリカの著作家であり活動家のレベッカ・ソルニットによる著書『ウォークス 歩くことの精神史』では、移動時間が短縮したのと同時に、移動そのものよりも目的地に到着することが重要視されるようになってしまった、と記されている。

コロナウイルス対策、ソーシャル・ディスタンシングに徒歩のススメ【いまだからできること #5】

『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット 著  東辻賢治郎 訳 左右社 ¥4,950(税込)

いま、人々が募らせているストレスの原因のひとつとして考えられるのは、移動ができないことではなく、日常の目的地(=職場に行くこと)がなくなり、かつその術(=電車やバス)に対して恐怖心を抱く状況にあるからではないか、と思うのである。

忘れてはならないのは、人は一人で歩けるという非常に基本的なことだ。たとえば職場や打ち合わせ場所、あるいは少し離れた場所へ買い物に行かなければならない時、いつもより時間は当然かかるが、一人で歩けば密室の中に入る必要もなく、誰かとの距離を保つこともでき、さらに気まぐれにルートを変えれば新たな発見があるかもしれない。素朴なことだが、これはコロナ対策である物理的距離を保つこと、いわゆるソーシャル・ディスタンシングに繋がるはずだ。

先で触れた『ウォークス 歩くことの精神史』は、歩くことが好きだったソローやルソー、ニーチェといった作家、哲学者の徒歩について、著者の経験に基づく私/詩的な言葉を織り交ぜながら語られている。気合いを入れる必要はなくて、思考とリフレッシュのために少しばかり歩いてみることを推奨しているのだ。こんな状況だからこそ、ゆったりと歩き、徒歩の楽しみを見出してみてはどうだろう。(編集YO)